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ベイズ統計への期待の変更点

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!!ベイズ統計とは

初めてベイズ統計の話を聞いたのは、生産ラインの製品の品質テストで何件のサンプルを抜き取ればよいかを検討するのに、ベイズ統計が使われているということでした。

また別の機会に、電子メールのフィルタリング(迷惑メールを振り分ける)の判断にもベイズ理論が使われているという話を聞きました。

この二つに共通する話は、ベイズ統計の考え方が「動いている現実世界」を対象にしているという点です。サンプリングという考え方が大きな山からサンプルを抜き取って山全体を推定する方法であるとすれば、ベイズは日々目の前を動いて通過していくものから適宜「検問」して問題を見つけるという考え方というのが、私の捉え方です。

これはベイズの条件付確率という考え方によるものですが、事前に想定した確率を、新たな事実によって修正し、事後確率を得て、それをさらに次のステップの事前確率として用いて新たな事実を入手して・・・・という具合に、繰り返し積み重ねていきながら、ある確率を更新していくものです。

!!ベイズ統計と監査手続との親和性


この話を聞いた瞬間、「監査に使えるかもしれない」と頭が反応しました。なんら根拠はありませんが、直感でしかありません。

取引の認識から始まる一連の会計プロセスを、決算という生産物を想定した処理工程の上で個々の取引を流していく手順の固まりと捉えると、取引記録の信頼性を担保するために、何件の取引を抜き取ればよいかを考える方法論として使えるのではないかと直感したわけです。

通常の監査は、月次決算や四半期決算など、「締まった」後に行われます。この場合、取引の山の中からいくつかのサンプルを取り出して・・・・という推測統計のような考え方が馴染むのですが、昨今の監査は時間的制約や不正発見の要請などから、なるべく「早く発見し早く対処する」という傾向が強まっており、山ができてから山を想像するのではなく、山が作られる際の過程を見てどういう山ができるのかを想像するというアナロジーに変わっています。

そこでベイズ統計の考え方を用いて、日々取引が流れる中で「怪しいもの」を抜き取る方法が確立できるのではないだろうかと考える次第です。両者を対比してみますと次の表のように考えているということです。

,ベイズ統計,会計監査
,事前確率,リスク想定
,新たな条件の追加,監査証拠によるリスクの変化
,事後確率,リスク(再)評価

このためには、会計リスクを取引との関連において指標化するという方法が必要になります。いわば、一枚の伝票を取り上げた際に、その伝票の項目を何らか数値化してリスク指標とするわけです。

但し、この考え方は目新しいものではありません。監査人は取引を見る際に、金額以外にも取引条件や相手先、頻度、時期、他の取引との関係などいろいろな要素を頭に入れながら「怪しい取引」を判断しています。ここは監査人のレゾン・デトルのようなところですが、人工知能などを補助的に使うことも可能ではないでしょうか。
但し、この考え方は目新しいものではありません。監査人は取引を見る際に、金額以外にも取引条件や相手先、頻度、時期、他の取引との関係などいろいろな要素を頭に入れながら「怪しい取引」を判断しています。ここは監査人のレゾン・デトルのようなところですが、機械学習の方法論などを補助的に使うことも可能ではないでしょうか。