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会計データ

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会計データの位置づけ

監査が対象とする財務諸表は試算表を基礎として作成される。

そして試算表は各勘定科目ごとに仕訳された金額の集約であり、仕訳は取引と対応している。

つまり、経理業務に携わる者は経理マンであろうと監査人であろうと、こういったデータの構成と生成過程とを与件として知っている。

取引→仕訳→勘定別集計→試算表→財務諸表

昨今の情報システムは、取引が正しく(想定仕様どおりに)システムに入力されれば、自ずと財務諸表が作成される仕様になっているので、経理業務の中心は「取引を正しく入力する」ことに注力される。

日商簿記検定は、これを電卓と手書きで処理する能力を測るものなので、実務環境の変化に対応していないという意見もあろう。

しかしこの意見には反対である。システムの仕様どおりに取引を入力していれば、決算が終わるという考え方は、システムが会社の取引をすべて知っているという前提に立っているが、高度な人工知能のようなシステムは残念ながら存在しない。ガラガラ・ポンと決算ができるというのは誤解である。

取引データ

会計における取引とは、財政状態および経営成績に影響を与える企業活動(企業環境の変化も含む)のすべてを言う。したがって、ビジネス上の取引(商行為)よりも概念は広い。例えば、所有株式の株価の変動は株式が実際に取引されているという意味ではないが、会計では取引事象である。

会計の仕組みは、会計基準に従って決算に反映させるべき取引を網羅的に拾い上げるように設計されなければならないが、以下の3つの観点がある。

  1. 環境変化に伴う財政状態の変化の認識
  2. 時の経過に伴う財政状態の変化の認識
  3. 商行為に伴う財政状態の変化の認識

通常の会計システムは3番目の項目しか対応しておらず、1番目2番目の項目は個々に認識して手で処理しなければならない。但し、3の商行為のすべてがシステムで想定された形で処理できるわけではないので、例外事象の把握も必要である。

つまり、会計システムで何が処理されるのかを知ることは、何が処理されないかを知ることでもあり、前提として何が会計処理されるべきかを企業の状況を捉えて理解しておかなければ、本来必要とされる決算はできない。

処理されるべき取引−システムで処理される取引=システムで処理されない取引
(会計基準と会社の     (情報システムの仕様)            (人による処理)
環境や商行為)

会計人はこの式を常に意識しておかねばならない。

ところが、ガラポン式に計理を捉えていると、システムが何でも処理してくれると勘違いしているので、本来、処理が必要なものが漏れてしまう。つまり、企業活動を会計基準に照らして理解しているということは、会計基準を知るだけでは不十分で企業活動自体を知って初めて十分といえるのである。


Last updated 2016-05-21 | auditR (c) N.Nawata