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監査リスクと不正リスクの関係

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 監査リスクと不正リスクの関係

監査リスクとは

監査リスクとは、財務諸表が事実に基づかない状況(虚偽)を表示し適正でないにも拘わらず、監査人が適正であると誤った意見を表明してしまう可能性を言う。概念的には、適正な財務諸表を適正でないとする可能性も含まれるが、ここでは割愛する。また、誤った監査意見を表明した結果として、監査人に降りかかる損失(訴訟や風評など)は、監査人のビジネスリスクであり、監査本来のリスクではない。

監査リスクは監査の実施者にとっての固有のリスクである。監査人が監査リスクを軽減するには、監査人として(重要な)虚偽表示がないことを確かめた事実を積み重ねた上で、判断を誤らなければよいことになる。

この場合、事実とは監査証拠のことであり、確かめるということは心証形成過程であり、判断が意見ということになる。

監査人が判断を誤るということは、誤った監査証拠ないしは不十分な監査証拠により誤った心証を形成してしまうことである。

虚偽表示リスク

虚偽表示リスク不正リスクと誤謬リスクにより構成される。言い換えれば、虚偽表示は不正ないし誤謬の結果として発生する。

一般に虚偽表示リスクという場合は、その原因が不正であるか誤謬であるかは問わず、その影響が財務諸表全体に及ぶものなのか、ある特定の科目のアサーションに影響するものなのかという結果的観点で考える。

虚偽表示は監査対象組織固有のビジネスの状況や会計処理の仕組みにおいて発生するものであるから、虚偽表示リスクは監査の有無とは関係なく存在している。

不正リスクとは

不正リスクは、財務諸表の中に何らかの事実と異なる処理や会計基準では認められない処理が意図的に含まれる結果、財務諸表自体が歪められてしまい虚偽表示に至るリスクを言い、顕在化すれば利用者に誤った情報が伝えられ、会社の財政状態や経営成績が誤解される。

不正には必ず実行者がいることが想定されるため、一般に、経営者・管理者レベルによる不正と従業員レベルによる不正の実行者に分類される。従業員である場合には会社の内部統制により牽制され防止され発見される可能性があり、手口が巧妙であれば発見されない。経営者による不正は、そもそも内部統制の効力の外で発生することになる。

が、経営者・管理者による作為による不正と不作為による不正という考え方もある。すなわち、経営者による作為は内部統制の無効化という形で現れ、経営者による不作為は内部統制が改善されないことによる機能不全によってもたらされる不正である。

すなわち、監査人が対処すべき不正は、首謀者に係らず内部統制の支援は得られない部分であることに注意が必要だ。

不正リスクは監査人にとっては経営者の支援が得られないところで発生する。経営者の有効な支援があれば、内部統制は有効に機能しているとの前提が置ける。

監査リスクとはほぼ不正リスクである

虚偽表示リスク不正リスクと誤謬リスクとで構成されるが、不正リスクは意図的な虚偽表示であるという点が異なるだけで、財務諸表の品質という点では同じであるという考え方がある。

しかし、誤謬は勘違いが継続的に適用される場合(極端な例では、会計方針が実態に適合していないなど)を除き、個々に独立しているため、内部統制の質に反比例して発生すると考えられ、金額的な分布も幅広いと考えられるものの、より大きな誤謬ほど発見されやすいとも考えることが可能である。が、不正は実行者の恣意が入るため、反復可能性があり、特に虚偽表示自体を目的とする場合においては、隠蔽工作が入るため金額的分布はさておいても、影響は大きく表れると想定されることになる。

監査リスク不正リスクとは結果からみれば、財務諸表の利用者を誤解させるという点で同類のリスクに見えるが、結果ではなく可能性という点を丁寧に考えると明らかな違いがある。

端的には、不正リスクがあった場合に、監査人が適正意見を出さなければ、監査リスクは軽減されたことになる。


Last updated 2016-11-20 | auditR (c) N.Nawata