!!1-4-4 通信事業における考え方 減価償却が、所詮はみなし計算である、裏返せば投資の時点で既に決まっているコストであり企業活動の成否と直接的には関係なく発生するものであると割り切ってしまえば、むしろ減価償却計上以前の利益をいかに大きくするかという観点で考えてもよいということになります。 つまり減価償却が与件であるとすれば、顧客から得られる収益から顧客サポートなどのコストを差し引いた純キャッシュフローをもって借入金の返済(債権者へのコミット)と配当金(株主へのコミット)が支払えるような利益管理を行えば、とりあえずいまの事業は継続していけるという前提が置けます。 ""顧客から得られる純キャッシュフロー>調達資金返済額+社外分配のコミット・・(1) なお、(1)式の左辺は、 ""(左辺)=サービス純収入−設備運営維持コスト−組織マネジメントコスト ""さらに、 ""サービス純収入=サービス収入−顧客サービスコスト(請求やカスタマーサポート) となります。 ここで、設備に余裕があるので現有設備を前提に市場開拓を行い、その投資に必要な資金を全額借入で賄うとすれば、 ""新規顧客獲得(市場開拓)=資金調達額・・(2) と仮定できます。 (1)−(2)で、 ""現有設備から得られる純キャッシュフロー>借入金純減+社外分配コミット・・(3) となります。 勿論、(1)において左辺が十分に大きければ市場開拓も自己資金で賄えますが、(3)の左辺はその分減少し、右辺の借入金の純返済額(純減)はもっと増えますから、両辺の差は段々と小さくなっていきます。 ここでさらに、資金調達によって新規設備を賄うとすると、 ""新規容量設備投資=資金調達額・・(4) と仮定できます。 (3)−(4)で、 ""事業活動から得られる純キャッシュフロー>借入金純減+社外分配コミット・・(5) となります。 (2)及び(4)を実行する上で重要なポイントは、借入の返済をきちんと行えるだけのキャッシュフローの増分が得られるということですから、 ""新規獲得による期待キャッシュフロー回収期間<調達資金返済期間・・(2)’ ""また、 ""新規容量投資による期待キャッシュフロー回収期間<調達資金返済期間・・(4)’ ということになります。 これらは、裏返せば、 ""新規獲得による期間増分キャッシュフロー>調達資金期間返済額・・(2)” ""新規容量投資による期間増分キャッシュフロー>調達資金期間返済額・・(4)” ですから、(2)や(4)の投資意思決定時においては、(2)’(4)’が重要なポイントとなります。また、投資実行後においては、これらを達成すべく(1)(3)及び(5)がきちんと管理されることが必要となり、不等号の向きが逆になるような投資は行ってはならないことになります。 ここで、(1)における左辺と右辺との差分は、キャッシュの期間増分を意味します、この増分が意味するのは、投資の当初においては直ぐに効果が現れるわけではないので(2)ないし(4)の実行によって増加する借入金返済額を直ぐに賄えるわけではありません。すなわち(1)によるキャッシュフローが投資のリスクバッファという位置付けになっています。 04年10月17日 !!事業計画における予算は「資本金」 事業計画、経営計画、予算など名称は色々ですが、いわゆる予算統制を行っていない会社は存在しないでしょう。経営者が業績目標について対外的にコミットメントを表明する以上、その根拠として各組織の予算があることは、至極当然の前提です。 では、この予算について全ての組織が正しい理解をしているかというと、甚だ疑問が残ります。特に多い予算についての勘違いが、「使ってよいお金の上限額」という考え方です。最たる例は国や地方公共団体の予算執行ですが、民間企業とてこれを笑ってはおれません。 組織でお金を使う以上、必ず背後には経営目的があって、その目的を達成するための個々の業務目標があるわけで、この目標を実行するために予算が与えられているわけです。つまり、ある目的があって会社を設立し、その理念に共鳴した人がお金を出資して、経営者はそれを適確に運用し成果を出す義務が与えられている構造と同じように、個別組織の責任者にも、予算が与えられる以上、かならずそれに見合った目的を達成することが求められます。換言すれば、予算を与えられるということは、本部組織から出資を受けたことと同様です。裏返しに本部組織は資金の配分を通じて全体の組織パフォーマンスを最大化することが求められており、各組織に対して出資していることと同様になります。 つまり予算を与えられることは、 ,(借方),(借方) ,資金決済勘定,社内資本金 という取引を執行したことと同じであり、予算を与えることは、 ,(借方),(借方) ,社内出資金,資金決済勘定 ということです。 一般の簿記では、社内付替えや現金のやり取りなどが行われない限り、本支店勘定を用いた仕訳が切られることはありません。 資金決済勘定とは本社に置いてある各組織の一種の預金口座であり、一定期間後にこの預金口座残高をコミットしたところまで増やして、社内配当金として出資元に還元するか、ないしは、それ以外の定められたパフォーマンスを上げる必要があります。 資金決済勘定が底を突くということは、予算をオーバーしてお金を使っているということになりますので、予算執行組織は予算決定組織から新たに資金を調達する必要があります。 実はこの社内資本金の考え方、つまり、どの単位で社内資本金を設定するか、あるいはどのように回収目標(期間や利回り)を立てるか、どうやって回収するか、などが、管理会計を通じた業績把握にとって非常に重要な要素となるのです。 設備投資の大きな組織では、社内出資金についても、一年で投資を回収すべき経常予算と一定の投資回収期間を想定して回収する投資予算とを峻別することも必要になってきます。つまり、経常予算を執行して得られるキャッシュフローを設備投資の回収に回すという考え方です。 初稿:2004年12月18日