!!!価値の源泉は、「繋がっていること」 ネットワークには多様な種類がありますが、いずれも何らかの形で繋がっていることが社会にとって意味を持っているということがいえます。 例えば、電気、ガス、水道の供給網は、エネルギーの供給元から消費者へとエネルギーが供給されるための繋がりであり、電線が切れたり、ガス管が外れたりすれば、直ちに供給はストップします。 このように「繋がっていること」が価値を持つわけですが、繋がりによってもたらされる便益の種類によって繋がり方にもいろいろな形式があります。 これは、ネットワークで繋げられているものが単方向に動くだけでよいのか、双方向に動かねばならないのかによって大きく変わってきます。 :単方向型ネットワーク: 単方向(1:n)型のネットワークでは、供給者から需要者へと財が一方向に流れる繋がりが価値を持つわけですから、ネットワークの参加者の数に比例して、ネットワーク全体の価値が決まります。つまり、 V(N)=N となります。 :双方向型ネットワーク: ところが双方向(n:n)型のネットワークでは事情が異なります。 それは、ネットワークへの参加者が増えれば増えるほど、「繋がっていること」の価値が級数的に増える点にあります。 まず、Aさん、Bさんが単独で存在している状態は、お互いが繋がっていませんから、ネットワークは存在しません。従って価値は0です。 そしてAさんとBさんが繋がっている状態は、単純に一つのリンクしかありませんから、ネットワークの価値は1リンクでしかありません。 しかし、これにさらにCさんが加わって参加者が3人になると、A-B、B-C、C-Aという三つのつながりが形成され、ネットワークの価値は3リンクとなります。 さらにDさんが加わり4人になるとどうなるでしょうか。 3人のときの3リンクにさらに、D-A、D-B、D-Cという3つのリンクが増え、ネットワークの価値は6リンクとなります。 このようにEさん、Fさん、・・・・と参加者を増やしていくと、参加者が一人増えるごとにそれ以前までの参加者とのリンクが増えていくことになります。つまりリンクを一つ追加することは新たな参加者に対する便益だけでなく、既存の参加者の便益をも増やしていくことになります。 すなわち、次のような法則が成り立ちます。 ,n=,V(n) ,1,0 ,2,1 ,3,3 ,4,6 ,5,10 ,....,.... ,n,V(n-1)+n-1 ,n+1,V(n)+n ,....,.... これは、 V(n-0)-V(n-1)=n-1 V(n-1)-V(n-2)=n-2 V(n-2)-V(n-3)=n-3 .... V(n-n+1)-V(n-n)=n-n となりますから、両辺をそれぞれ合算すると、 V(n)-V(0)=n*n-(1+2+3+....+n) したがって、 V(n)=n(n-1)/2 これは、メトカーフの法則(Metcalf's Law)といわれる公式です。 :メトカーフの法則(Metcalf's Law): メトカーフの法則とは、「ネットワークの価値は、参加者数の二乗に比例する」という考え方です。 ここで言っている価値とは「繋がっていること」であって利用しているいないとか品質などは関係ありません。そして「繋がっている」はあくまで結果的にそうであればよいので、必ずしも全ての当事者同士がそれぞれ直接繋がっている必要はありません。例えば、当事者が一直線上に繋がっていてもいいわけです。 もうひとつ言えることは、利用者にとっては、(使う使わないに関わらず)繋がっていていつでも利用できる状態であることそのものが価値を持ち、さらにそれを利用することによる便益(価値)を得ることができるという、価値の二重構造があることが、ネットワーク産業の特長です。 この点は、スポーツ(ゴルフなど)クラブで、いつでも利用できるという意味での会員権の価値とは別に実際に利用するときにプレイフィーを支払う(利用価値)という構造と類似しています。 初稿:04年08月31日