月次資金の移動の把握と翌月以降の資金繰り状況
前項ではEBITDAによる業績管理の裏腹には、債権債務の回収と支払がいつなされるかがきちんと管理されていてなおかつほぼそのサイクルが一定であることが前提にあることを述べました。つまり、債権が計上されても経営上の合理的期間内に必ず回収される、あるいは債務が計上されても一度に支払われるのではなく、一定の期間を置いて支払われ、両者が程よくバランスしているか、回収よりも支払が遅くなければ、いずれ企業は資金繰りに窮することになります。EBITDAが収益に対する一定の率以上の割合を持っていなければならないというのは、債権債務の計上から回収・支払までの月ごとの割合を示したデータから簡単に導くことができます。
例えば、設備投資や借入を全く行わない会社があったとします。EBITDA比率(=EBITDA÷収益)が20%として、毎月100の売上を計上しているとすれば、20ずつの資金を蓄積していくことになります。しかし売掛金の回収状況が悪く翌月の回収率が60%であるにもかかわらず、支払はこまめに行っており翌月には全額を支払ってしまうとすれば、次のような収支トレンドのパターンが形成されます。
項目 | N月 | N+1 | N+2 | N+3 | N+4 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
収益 | 100 | 100 | 100 | 100 | 100 | ||
費用 | 80 | 80 | 80 | 80 | 80 | ||
EBITDA | 20 | 20 | 20 | 20 | 20 | ||
収入N | - | 60 | 24 | 10 | 3 | ||
収入N+1 | - | 60 | 24 | 10 | 3 | ||
収入N+2 | - | 60 | 24 | 10 | 3 | ||
収入N+3 | - | 60 | 24 | 10 | |||
収入N+4 | - | 60 | 24 | 10 | |||
支出 | - | 80 | 80 | 80 | 80 | 80 | |
Net収支 | - | -20 | 4 | 14 | 17 | 17 |
つまり当N月の収支がほぼ回収されるにはN+3月までかかってしまうということになりますから、EBITDAをそのまま設備投資や配当に回そうとすると、その間を借入金で凌がなければならないということです。
EBITDAは正味運転資金の裏付けとなるキャッシュ項目ですが、EBITDAがpositiveで運転資金が増えているといって安心してはいけません。正味運転資金の構成を分析して「質」をきちんと把握していかないと、本当の現金が減りつづけていったということになりかねません。EBITDAによる管理にも思わぬ落とし穴があるので、投資の回収だけでなく営業債権債務に付いてもバランスシート計画が重要であることに注意しましょう。
項目 | 金額 | 摘要 |
---|---|---|
EBITDA | xxx | |
売掛債権の減少 | xxx | |
買掛債務の増加 | xxx | |
その他増減 | xxx | |
正味現金同等物の増加(上記計) | xxx | ←これが「減少」になっていると危ない!! |
期首現金同等物 | xxx | |
期末現金同等物 | xxx |
更新:2004年10月17日初稿:2004年05月03日
最終更新時間:2007年12月02日 15時37分15秒