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通信市場の競争原理

【私的草稿】通信事業会計

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通信市場の競争原理

ここではMichael PorterのFive Forces' Frameworkを使って分析を試みます。Five Forces' Framework (FFF)とは、ある企業が属する産業の置かれている状況を、次のような観点から分析して、産業の競争状況を特徴づけようとする手法です(Porter, 1998)。各Forceはそれぞれが相互に影響し合っているので、独立して存在しているわけではありません。

(1)産業市場への参入障壁

一般に自由競争市場では、参入と退出が自由にできることになっています。しかし市場にはいろいろな参入障壁があります。例えば、官庁による許認可は参入障壁の最たるものといえるでしょう。しかし官庁による規制以外にも事実上の参入障壁はたくさんあります。何らかの先取特権が事実上認められるような産業では、後発参入者は既存のプレイヤーから権利を買取るという形で市場に参入せざるを得ません。産業にボトルネックが存在しそのボトルネックが自由に売買されるものでなければこのような事実上の参入障壁が発生します。また特定のノウハウを要するようは産業では、それを持たなければそもそも参入ができないことになります。ノウハウには特許やライセンスなどの明示的なものから、営業ノウハウ、販売チャネル、仕入チャネル、特定技能を有した被雇用者の存在などがあります。

(2)代替プロダクトの存在

代替プロダクトとは、あるプロダクトが存在しなくても他のプロダクトで間に合わせが利くとき、あるプロダクトと他のプロダクトとの間に代替関係が存在すると言います。一般に工業製品や農産物などのように大量生産されるものは代替可能性が高いものが多いと言わざるを得ません。逆にオーダーメイドの製品は代替可能性が低くなります。これも考え方(つまりプロダクトを購入する顧客の選好の強さ)によって、代替性があるともないとも両方の言い方ができます。例えば東海道新幹線は一見すると独占市場ですが、「東京=大阪間の移動手段」と考えれば、利用者が飛行機や高速バスを選択することができることから、代替市場が存在すると言えるのではないでしょうか。娯楽産業のように、消費されるものが一見するとサービスであるかのようですが、実際は「時間を楽しく消費する」と考えれば、出版、音楽、テーマパーク、ゲーム、玩具などは代替プロダクトとなりえます。つまり、顧客が特定の固有名詞でそのプロダクトを指定して購入する場合と、一般名詞で購入する場合とで、代替可能性は変化します。言い換えれば企業が顧客をどう捉えるかによって変わって来ることになります。

(3)仕入先の価格交渉力

仕入先がコモディティであれば、市場原理が直接的に働くため仕入先の価格交渉力はあまり強いとはいえません。例えば石油を考えてみますと、カルテル(禁止されている)でもしない限り、最終的には産油国の出荷額とパラレルに価格は動くと考えられます。したがって産業は仕入先に対して相対的に強い価格交渉力を持っていることになります。しかし、パソコンメーカーはCPUを特定の設計製造ノウハウを持った一部の企業から仕入れるしか方法はありません。そうなると、パソコンメーカーは半導体メーカーに対してあまり強い交渉力を持っているとはいえません。

(4)販売先の価格交渉力

上記(3)と表裏の関係です。

(5)産業内部の競争状況

産業内部で価格競争やサービス競争がどのように行われているかという観点です。例えば、家電業界や自動車業界では新製品や新サービスがほぼ季節ごとに目まぐるしく登場し、各社は熾烈な競争環境に身をおいていると言えるでしょう。一方で旧電電公社のように独占が保障されていた状況では、競争が存在しないということも言えます。

企業の戦略は、この競争原理の捉え方次第で全く違ったものになります。

2004年11月01日


最終更新時間:2007年12月01日 12時49分54秒