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八百屋さんの場合

【私的草稿】通信事業会計

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このページの見出し構成


1-4-2 商品販売(八百屋さん)の場合

まずは、現在の会計の基本パラダイムとなっている、商品販売業を採り上げてみましょう。

商品を仕入れて販売するという業態においては、仕入〜販売の過程においてはその取扱う商品に価値の変化はありません。単純な例を挙げれば、八百屋さんが市場で野菜を仕入れてきて店頭で販売したからといって、その野菜の本質的価値が変化するわけではありません。しかし時間が経つに連れて鮮度が落ちていくことから、下手をすると価値が下がることはありえます。

こういった業態においては、売上高−仕入高−売れ残り(在庫)として計算される売上総利益は、その業態が持っている直接的な付加価値を表現していると考えられます。平たく言えば、地域の存在として、朝早く起きて市場に行って野菜を競り落とし、軽トラックで運んで、店先に並べて近所のお客さんに販売するという「行為」から生ずる価値であるわけです。

例えば、

    • お客さんに代わって、品質を見極めてよいものを選択する(野菜の目利き)
    • 大量に仕入れることで中卸のリスクの一部を負担することによって仕入価格を下げる(値切る)
    • 遠くの市場から近所の店頭まで運搬する(運ぶ)
    • 少人数の家庭でも消費できる単位で販売する(小分け:顧客のリスク負担と分散)
    • 美味しいもの旬の素材に関する情報提供や今夜のおかずの相談(コンサルティング)
    • 主婦へのお世辞(リップサービス=顧客満足)
    • 劣化リスク負担

などです。

最後の劣化リスク負担とは、生鮮食品は当然、時間とともに品質が落ちますから早く売りさばく必要があります。そのためには、価格を下げてでも売っていかねばなりませんから、この価格が下がった分だけ八百屋さんは劣化分のコストとして負担していることになります。逆に顧客からすれば、いつでも新鮮なものが購入できるという付加価値が提供されているため、冷蔵庫にストックするというコストを回避しています。

そういった一連の行為(ビジネス活動)の総価値が売上総利益という数字で表現されていると考えられます。

では、そのようなビジネスを行うために不可避的な要素にはどのようなものがあるでしょうか。まず思いつくのが、青果物を運搬するための軽トラックのガソリン代やリース料ないしは車検代、店舗の水道光熱代、店舗が賃借であれば家賃、アルバイトを雇っていればその賃金などがあります。

ビジネスの総価値である売上総利益から実行のための不可避的要素コストを差し引いたものが、地域でそのビジネスを行っている八百屋さんに対する報酬です(税引前利益)。

しかし、その報酬には一定割合の所得税がかかりますので、ここから税金を差し引いたものが最終的に八百屋さんが自由に使うことができるお金となります(期間利益)。

些か荒っぽい説明ですが、ビジネス活動から発生する利益に対する考え方のイメージを提供したつもりです。大事なことは、利益とは色々な概念があり考え方があること、何を利益とするかはその業種業態によって全く異なっていることがあること、利益が表現している「意味」をきちんと考える必要がある点を確認しましょう。

04年10月17日


最終更新時間:2007年12月02日 14時24分39秒