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取引仕訳と表示の変更点

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!!!業務レベル、勘定科目レベル、財務諸表レベルの違い
!!財務諸表レベル
財務諸表における表示の組替えや要約を仕訳で表現するのは会計の実務ではよくある話です。
例えば、総勘定元帳(試算表)にある「現金」「当座預金」「普通預金」という三つの勘定科目があったとします。通常の決算書ではこれらを要約して「現金及び預金」という科目で表示しますから、元帳(試算表)から財務諸表への要約をするということを表現として、 
,借方,金額,,貸方,金額
, 現金及び預金,xxx,,現  金,xxx
,,,,当座預金,xxx
,,,,普通預金,xxx
というような仕訳を書くことがあります。

!!勘定科目レベル
総勘定元帳あるいはそれを集約した試算表は、日常業務と密接にリンクした補助元帳と、公表される財務諸表とを連携させるための重要なツールです。

例えば、関係会社に対する売掛金を決算書の上で注記しなければならないというルールがあったとすると、この情報を簡単にとるために、総勘定元帳上に「売掛金」と「関係会社売掛金」という科目をあえて設定しているケースがよく見られます。

筆者が考えている総勘定元帳の姿とは、組織で生じているいろいろな事象を利益計算モデル(取引の認識/測定を通じた資産・負債及び払込資本の増減により純資産の変動を計算する)に分類し当てはめるだけでは必要であっても十分ではなく、サブシステムからの同期が取れているかどうか確認することがもう一つの最も重要な役割であると考えています。
仕訳とはサブシステム間の同期を取るための重要な手段であり、仮に借方項目へ寄せられる情報と貸方項目へ寄せられる情報の同期が取れていなければ仕訳の貸借一致は成立しません。

例えば、売掛金を預金で回収したというケースを考えてみます。

通常は、
,借方,金額,,貸方,金額
,普通預金,xxx,,売掛金,xxx 
という仕訳を切ります。
しかし、売掛金を扱っている組織と預金を扱っている組織は、内部牽制という観点から通常は異なっています。例えば料金部門と資金部門とがそれぞれ得意先台帳、預金台帳といった補助簿をもって業務を行っているはずです。
つまり、料金部門で認識される取引とは、「売掛金を預金で回収した」という事実であり、資金部門では「ある取引先からの振込みにより預金が増加した」という事実となります。そうなると、「売掛金を預金で回収した」という一つの事実に対し、二つの「処理」が発生することになります。
通信事業者となれば取引先は相当に多く事務処理のほとんどはIT化されていることでしょうから、それぞれの業務は「売掛金管理システム」や「出納管理システム」などによって運用されていることでしょう。
これら二つの処理を同期させる役割を持つのが仕訳であり、事実上はその同期の確保(検証とエラーの通知)を情報システムが担うべきであると考えます。

すなわち、
,借方,金額,, 貸方,金額,摘要 
,預金で回収, xx,,顧客名,xx,料金部門の業務
,預金口座,xx,,売掛金の回収,xx ,資金部門の業務 
という仕訳データがそれぞれの部門の補助簿から経理部門(すなわち総勘定元帳)へと送信されてくるわけで、会計システムでは それを、
,借方,金額,, 貸方,金額,摘要 
,預金, xx,,売掛金,xx,
という仕訳データを生成するのみならず、
,借方,金額,, 貸方,金額,摘要 
,銀行勘定−売掛金回収, xx,,顧客勘定−売掛金回収,xx,資金=料金の同期の確認 
という両システムの同期を図り、両者の時期と金額が合致していることを確認することが重要な役割となります。これはITだから重要であるということではなく、旧来からの簿記の教科書にも、総勘定元帳の勘定科目を集約した合計残高試算表の重要な役割は貸借の一致を確認し仕訳の転記漏れがないことを合理的に保証することになると書いてあります。
最近ではERPなどを導入する企業も増えており、こういった点について日常業務で懸念する必要もなくなりつつありますが、一部業務をオフラインやバッチで行ったり手作業が介在するようなケースの場合などでは、依然として重要な統制手続となります。

!!業務レベル
総勘定元帳システムから見たサブシステムのもう一つの役割は、ディスクロージャに必要なサマリーデータを作成することです。

*売掛金増減内訳要約表
*売掛金の回収期間別残高
*売掛金の手段別回収額
*売掛金の相手先分類別残高
*回収懸念先別売掛金一覧
・・・

などを作成します。これらはディスクロージャ項目の変化に合わせて柔軟に変更可能である必要があり、管理上も多面的な帳票が作成されることを期待されているはずです。このように考えると、ある一面だけを見て勘定科目を設定し試算表に表示することはさほど意味がないように思えます。むしろそういった必要なデータは、仕訳データから生成される総勘定元帳及び試算表との同期が取られているという前提のもとに補助簿から直接抽出できるようにし、別途必要な表示上の調整を加える方が、実務上は使い勝手がよいのではないでしょうか。つまり、全体としての仕訳データの完全性を確保した上で、部分のデータが安心して利用できるということになります。
などを作成します。これらはディスクロージャ項目の変化に合わせて柔軟に変更可能である必要があり、管理上も多面的な帳票が作成されることを期待されているはずです。このように考えると、ある一面だけを見て勘定科目を設定し試算表に表示することはさほど意味がないように思えます。むしろそういった必要なデータは、仕訳データから生成される総勘定元帳及び試算表との同期が取られているという前提のもとに補助簿から直接抽出できるようにし、別途必要な表示上の調整を加える方が、実務上は使い勝手がよいのではないでしょうか。つまり、全体としての仕訳データの完全性を確保した上でなければ、部分のデータを安心して利用することができないということです。

初稿:2004年10月03日 13:3745