業務レベル、勘定科目レベル、財務諸表レベルの違い
財務諸表レベル
財務諸表における表示の組替えや要約を仕訳で表現するのは会計の実務ではよくある話です。例えば、総勘定元帳(試算表)にある「現金」「当座預金」「普通預金」という三つの勘定科目があったとします。通常の決算書ではこれらを要約して「現金及び預金」という科目で表示しますから、元帳(試算表)から財務諸表への要約をするということを表現として、
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | |
---|---|---|---|---|
現金及び預金 | xxx | 現 金 | xxx | |
当座預金 | xxx | |||
普通預金 | xxx |
勘定科目レベル
総勘定元帳あるいはそれを集約した試算表は、日常業務と密接にリンクした補助元帳と、公表される財務諸表とを連携させるための重要なツールです。
例えば、関係会社に対する売掛金を決算書の上で注記しなければならないというルールがあったとすると、この情報を簡単にとるために、総勘定元帳上に「売掛金」と「関係会社売掛金」という科目をあえて設定しているケースがよく見られます。
筆者が考えている総勘定元帳の姿とは、組織で生じているいろいろな事象を利益計算モデル(取引の認識/測定を通じた資産・負債及び払込資本の増減により純資産の変動を計算する)に分類し当てはめるだけでは必要であっても十分ではなく、サブシステムからの同期が取れているかどうか確認することがもう一つの最も重要な役割であると考えています。仕訳とはサブシステム間の同期を取るための重要な手段であり、仮に借方項目へ寄せられる情報と貸方項目へ寄せられる情報の同期が取れていなければ仕訳の貸借一致は成立しません。
例えば、売掛金を預金で回収したというケースを考えてみます。
通常は、
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | |
---|---|---|---|---|
普通預金 | xxx | 売掛金 | xxx |
すなわち、
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 | |
---|---|---|---|---|---|
預金で回収 | xx | 顧客名 | xx | 料金部門の業務 | |
預金口座 | xx | 売掛金の回収 | xx | 資金部門の業務 |
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 | |
---|---|---|---|---|---|
預金 | xx | 売掛金 | xx |
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 | |
---|---|---|---|---|---|
銀行勘定−売掛金回収 | xx | 顧客勘定−売掛金回収 | xx | 資金=料金の同期の確認 |
業務レベル
総勘定元帳システムから見たサブシステムのもう一つの役割は、ディスクロージャに必要なサマリーデータを作成することです。
- 売掛金増減内訳要約表
- 売掛金の回収期間別残高
- 売掛金の手段別回収額
- 売掛金の相手先分類別残高
- 回収懸念先別売掛金一覧
・・・
などを作成します。これらはディスクロージャ項目の変化に合わせて柔軟に変更可能である必要があり、管理上も多面的な帳票が作成されることを期待されているはずです。このように考えると、ある一面だけを見て勘定科目を設定し試算表に表示することはさほど意味がないように思えます。むしろそういった必要なデータは、仕訳データから生成される総勘定元帳及び試算表との同期が取られているという前提のもとに補助簿から直接抽出できるようにし、別途必要な表示上の調整を加える方が、実務上は使い勝手がよいのではないでしょうか。つまり、全体としての仕訳データの完全性を確保した上でなければ、部分のデータを安心して利用することができないということです。
初稿:2004年10月03日 13:3745
最終更新時間:2007年11月25日 10時04分22秒