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事業投資管理会計

【私的草稿】通信事業会計

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このページの見出し構成


1-4-6 事業投資管理会計

事業の当初資金+現在の未決済資金残高=事業投資額

当事者意識のある組織をもて組織の裏づけのない事業は管理できない

1-4-6-1 「事業」単位での投資管理の重要性

通信事業は、?先行投資により設備を用意して、?顧客を獲得し、?顧客の利用によるキャッシュフローで投資を回収していきつつ、?次の投資を行う、という流れを経ます。昨今のように技術進歩が激しくなりますと、先行投資といっても10年以上もかけて投下資金を回収するなど暢気なことは言ってられません。回収期間が長ければ長いほど、事業者は回収できないリスクを負うことになりますし、場合によっては前の投資を回収する前に新しい技術によるビジネスが登場してしまう可能性もあります。事業者が顧客を一定の基準で分類してそれぞれに戦略を立てて投資を行う単位を「事業」と言います。

事業投資の管理は極めて重要です。というのも、事業単位ごとの決算の総計が会社全体の決算となるわけですから。まず、その単位で組織や業務プロセスが用意されることになります(もちろん他の事業と共用される組織やプロセスもありえますが。)。したがって、事業単位でビジネスバリューチェーンが構成されることになります。どの事業がどれだけの資金を生んでいるか、あるいは消費しているかを監視しなければなりません。

事業にも栄枯盛衰があります。どの事業がビジネスライフサイクルのどのステージにあるかを見極める必要があります。また、撤退するにしても継続するにしても、過去どれだけの投資を行ってどれだけの資金を回収できたのかを知る必要があります。

これらのために、事業単位で会計報告をして企業内で情報共有を図る必要があります。

2004年05月03日

1-4-6-2 リスク分散構造としての事業単位

通信事業は、キャッシュフローのリスクが高いため、この管理が重要であることは他の項でも何度か触れています。先行投資を最終的には顧客の利用によって回収していかねばならないのですが、これをあえてリスク構造に応じて分割して事業単位を形成するという方法が採られます。これは、市場のレイヤ化とまったく同じことを企業内でバーチャルに行ってしまおうという考え方です。

まず思いつくのが、設備部門と販売部門の分離です。組織的には設備計画を立てて設備を構築し、ネットワークを運用する部門と、顧客から契約を獲得してこれを使ってもらう販売活動をする部門とは、当然に分かれていると考えられます。

設備部門の負うリスクは何かと考えると、過剰投資により設備が必要以上の冗長性を持ってしまうということになるでしょう。一方で販売部門が負っているリスクは、全く逆に、需要の急増に追いつけないということが考えられます。財務的に言えば、前者は投下資金が回収できないというリスクになり、後者は得られたであろう収入機会を失っているということになります。設備部門は当然に「在庫」を減らすように努力し、販売部門はなるべくバッファとしての在庫をたくさん持とうという動機が働くでしょう。両者のリスクは、投下資金の回収を早期に図りつつより多くの収入を得るという通信事業の性質から見れば、設備という「在庫」をどれだけ持つべきかということに関して利害が相反していることになります。

経営者としては両者の利害を調整しなければなりませんから、両者にそれぞれ次のような課題を出します。設備部門に対しては、経営上合理性を持つある程度の冗長性を確保するように指示します。同時にスケールメリットを活かしながらも販売部門の販売単価が下がるように設備構築コストや運営コストをより抑えるようにします。つまり多少の過剰があっても全体のコストが上がらなければ、財務リスクは発生しないという考えです。一方、営業部門に対しては販売のための十分な在庫を確保する代わりに、一定量以上の販売数量による収益確保をコミットさせます。

これを数式で表現すると次のようになるでしょう。

通信事業の目標=投資効率最大化=収益の最大化÷在庫コストの最小化営業部門の目標=収益最大化=顧客あたり収益の最大化×在庫に対する一定率以上の顧客確保設備部門の目標=在庫コスト最小化=在庫単位コストの最小化×顧客あたり一定在庫の確保

営業部門は顧客からの収益を最大化しつつ顧客数を増加させることで、事業全体の目標に貢献することになります。また、設備部門は設備投資コストを最小化しつつ一定在庫を確保することで営業の機会ロスを防止することになります。このように事業区分を設けることで、リスクが分散され組織本来の目標に沿って行動することで、会社全体のリスクがうまく調整されるというところに、リスク分散構造としての事業区分の意味があります。

2004年05月03日

1-4-6-3 WACCを事業評価に用いるな


最終更新時間:2007年11月24日 14時24分52秒