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本社費用

【私的草稿】通信事業会計

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1-5-8 本社費用

 1-5-8-1 本社費用の配賦

ことセグメント情報を作成する際に、本社費用を全てのセグメントに配賦する例が見られますが、本社費用を事後的に配賦すること自体にはあまり意味があるとも思えません。

本社費用はあくまでもセグメント全体が集まって負担するもので、個々のセグメントに跡付けできる費用はもともとセグメント費用として処理されているので、セグメント利益がいかほど得られるのかがセグメント情報の利用者にとっては最も興味の注がれる項目となるでしょう。

但し、管理会計の世界においては各セグメントに本社費用をも負担しなければならないという意識を持たせるために、あえて配賦するケースもあります。この辺は、内部利用なのか外部報告なのか、きちんと見極めた上で数字を作る必要があります。

筆者の考えは、外部報告目的では配賦そのものにあまり意義がないという点はさておき、予算管理という考え方の下に立てば、むしろ本社費用を包括的に各組織に負担させて、本社はそれを予算として本社費の支出管理を行うほうが、負担における各組織との牽制効果が上がることや予算と実績との差異が本社費用においても明確に分かるのではないかと考えています。

本社費の負担についてはどの会社にとっても悩みの種となっています。というのもどうやって各組織に負担させるべきか「正しい配賦方法」が提示されていないばかりでなく、いくらまでが本社費用として「正しい支出金額」なのかわからないというところにあります。負担させられる組織は自分たちの使った金でもないのに「どうして自分たちの組織で負担しなければならないのか」と思いますし、配賦しなければ現場組織(特に営業部門)は、本社費控除前の利益を見ることになり、管理コストを考えないで営業活動(値決め)をしてしまうという問題もあるでしょう。この辺は会社によって、各組織の会計の仕組みに対する理解の度合いや考え方の違いが出てくるところではないでしょうか。

04年10月17日

 1-5-8-2 本社費負担の考え方

本社費の負担の考え方には、これといった決め手はありませんが、どんな方法をとってもできれば負担したくないという負担する側の組織の論理と、負担してもらわなければ結果的に本社運営ができないどころか、会社全体として赤字になる可能性があると考える本社側の論理との板ばさみになるのは目に見えています。

しかしそれなりに理屈をつけて各組織に「公平」に負担してもらうモデルとして参考になるのは、国や地方公共団体による徴税モデルではないでしょうか。

税金には、徴税主体によって、国税と地方税とありますが、これは本社費用、支社等の管理費用に相当します。また、課税標準(税金計算の基)となるものには、法人の所得だけでなく、資本金や従業員数、売上高、付加価値などの規模(外形標準)や、不動産価格や面積・容積なども考えられます。税金は負担能力と納税者の公平感という一件矛盾するようなことを両立させようとしている制度ですからいろいろな綻びはありますが、一応は成立している制度ですからそれなりのものであることは間違いありません。

ここは本社費もひとつの税金と考えて、本社が行っている「サービス」についてどのように負担してもらうかという観点で考えるとそれなりの形ができるのではないかと考えます。

但しあまりに複雑にすると却って分かりづらくなるので、例えば労働集約型の組織であれば人頭税のような形で配賦する、資本集約的な組織では固定資産の残高に応じて、資本コストを意識させたいのならWACCを、さらに事業別に算定した資本コストを用いるなどの方法が考えられます。以下に、それぞれの利点と欠点とをリストアップしておきます。

  • 所得比例型:

最もわかりやすい。赤字部門には「還付」が発生してしまう。

  • 外形標準型:
  • 売上比例:

これも分かり易い。しかしコストセンターは負担がない。

  • 費用比例:

分かり易い。消費税のような考え方。

  • 資産比例:

本社費が資産の管理を中心として発生している会社には有効。営業部門には負担されない可能性がある。

  • 人数比例:

人に関する(人事部や福利厚生を管理する部門などの)コストは理解が得やすい。無人化工場などではほとんど発生しない。

  • 面積比例:

土地の面積や建物の延べ床面積など家賃などを本社集中払いしている場合に、管財部門の運営コストとともに面積で賦課することができる。しかし賃貸している組織には賦課されないかもしれない。

  • 端末数:

IT部門コストなど。伝票の処理量やオペレーションの量によることもできる。

ある意味、本社組織もサービス部門であるため、そういった部門のコストはサービス料を増減させるものをパラメータとすることができる。場合によってはこのようなコストを算定してみることで、社内で行うよりもアウトソーシングしたほうがよいとか、グループ企業で集中して処理したほうが規模のメリットが得られるというような判断にも用いられます。こういった声は、本社費用を賦課させられる各組織から自ずと出てくるでしょう(但し、きちんと情報を開示している限りにおいてという条件がつきますが)。

 スタッフ部門コスト

さて、問題は企画部門、経理部門、内部監査部門、法務部門など、経営スタッフといわれる部門のコストです。これらは経営者のためのコストとも言えますし、経理などは株主・債権者のために経営者が支出するコストでもあります。

上記のようなサービスに応じたコスト負担を精一杯行った上で考えれば、上記部門のコストは人件費や外部の弁護士やコンサルタントへの委託料などが主要なものになります。法務部門のコストなどは、受益者負担にすると特定案件を抱えている組織に過重に負担になったり、それを避けるために法務部門を利用しないで却ってリスクを大きくしたりすることがあるので、「無料」で利用できるようにするなどの配慮も必要です。

別に記しましたが、経理部門のコストなどはそれ自体を議論するよりも日々の業務を改善することが会社全体に大きなコストメリットをもたらすこともありえますので、そういった議論をきちんと行うことが、本来の予算管理には必要なことです。つまり正しい姿はないわけですから、経営者がどういう形で数字を見るかということにきちんと宣言(予算)しコミット(遵守)し結果を説明すれば、多少の不満があっても組織の納得感がそれなりに得られると考えられます。

04年10月17日


最終更新時間:2007年11月24日 18時38分52秒